館長あいさつ
本日は、ご来館いただきまして、誠にありがとうございます。当博物館の館長を務めます、TKと申します。さっそくですが、当館の趣旨についてご案内差し上げます。
こちらは飛行機(主に軍用機)を中心としたプラモデルキットの博物館となっております。「世の中にはこんな飛行機のプラモがあるよ」という、やや軽めの視点で、国内外のキットを紹介していこうというのが、当館のコンセプトであります。
■当館の楽しみ方
ここで皆様にご注意いただきたいのは、当館の展示は「キット製作を極めたい!」という方向けの展示内容にはなっていないということでございます。あくまでもキットの紹介、さらに言えば、わたくしTKの主観に基づいたご紹介になりますので、紹介するポイントやキットの評価等については必ずしも一般的ではない場合がございます。ともすれば、その方が多いかもしれません(笑)。展示を通して、来館者の皆様に「ほほう、こういうキットがあるのだな」という程度の発見と満足をご提供できれば、当館としては十分に目的を果たしたことになると考えております。欲を言えば「ちょっと私も作ってみるか」と思っていただければ、尚喜ばしいことでございます。ベテランモデラーの皆様には「フ・・・まあ、私も駆け出しの頃はこんなことを言っていたものよ」とご笑覧いただければ思います。
そのようなコンセプトにした理由を知っていただくために、当館設立の背景について少しばかりお話させてください。
■出戻り素人モデラーの選択
2016年秋、とあるきっかけで、20数年ぶりにプラモデルに手を染めてみたいと思い立ちました。あれこれと悩んだ末に辿り着いたのが「飛行機」というカテゴリーです。ガンプラで育った世代のわたくしですが、どうせ出戻るのであれば、ガンプラ以外、できれば元祖スケールモデルのカテゴリで楽しみたいと考えたのです。まあ、そのほうが、なんか年相応かなとも思いまして(笑)。
スケールモデルと言っても、車、船舶、AFV・・・と様々ですが、その中で飛行機に絞った理由は単純に「今の自分の技量には丁度良いかも」と思ったからです。もともと車が好きで、トミカリミテッドビンテージミニカーをコレクションしているほどですが、いざプラモとなると、"ツヤあってナンボ"のカーモデルは、エアブラシ経験もない自分の塗装スキルではかなりの高難度。一方、船舶は1/700のウォーターラインシリーズには興味津々なのですが、あまりにも細かすぎて高難度。そして残ったAFV系か飛行機系のどちらにするかを検討した結果、"汚してナンボ"のAFVは、エアブラシ経験も・・・(以下同文)。エアブラシが無くてもそこそこ仕上げられ、かつ、ウェザリング技法を極めなくてもいい。それが飛行機モデルに感じたメリットでした。ああ、なんというネガティブな理由(笑)
そしてスケールも1/72にこだわることにしました。キットサイズ的に、筆塗りに丁度良いと感じたことと、完成品の置場を考えての選択です(笑)(最近の主流は1/48になっているようですが)
■作り始めて気付いたこと
実際に作り始めてみると、もちろん想像していたのとは勝手が違う部分が多々ありましたが、この世界に実在したメカを作るという点において、ガンプラでは味わえない楽しみを見出しました。特に大戦機と言われるカテゴリーは、戦況や技術の進歩によって試行錯誤されていく設計思想や、国やメーカーごとに異なるデザインの多様さに魅了されます(現用機になるとそこまでの変化を感じにくい気がしています)。また、同じ機体でもカラーリングやパーソナルマーキングによって、大きく印象が変わるのも楽しく、ひとつひとつの機体にストーリーを感じさせてくれます。おかげで、それまで全く興味が無かった日本の陸軍・海軍の違いや、エースパイロットや技術者たちの物語にどっぷりとハマりました。最初の4カ月ほどで20機近い数を作る勢いです。アホです。
いくつかキットを組み立てて感じたことがありました。当たり前の話ですが、新しいキットが出てくれば、古いキットは消えていくのだなと。市場に出回らなくなったキットは、中古販売店やオークションで入手できるとはいえ、タイミングを逸してしまえば一生出逢えないものもあるんだと。その一方で、ン十年もパッケージを変えながら、デカールを変えながら生きながらえているキットもあるということにも驚きました。モノによっては海外出張しているキットなんかもあったりしますね。まさにキットに歴史あり、パッケージに歴史あり、デカールに歴史あり、です。
■キットの記憶を残したい
便利な世の中になったもので、モデルとなった実機たちの辿った運命や功績は、Wikiなどを紐解けば、結構調べることができます。マニアな方のブログなどでも、いろいろな情報を手に入れることが出来ます。また、キットの制作工程やテクニック、完成されたモデラーたちの素晴らしい作品も星の数ほど存在しています。しかし、意外とキットそのもののヒストリーというのは、ごく一部のサイトやブログで採り上げられたりしてはいるものの、しっかりとしたアーカイブがあるわけではないことに気付きました。かのハセガワ様のサイトですら、過去の生産商品を体系的に見せてくれるコンテンツはありません(まあ、やろうと思うとエラいことになるでしょうが)。
キットの歴史を知りたくて、あれこれ調べていたら、海外に「スケールメイツ」というサイトを見つけました。一昔前のバックダンサーみたいな名前ですが(昭和世代限定ネタ)、このサイトがなかなか面白いのです。現行キットの変遷が分かるデータベースは非常に貴重です。ただ、あくまでも年表的なものなので、どんなキットなのか、どんな物語があるのかまでは解りません。とても役に立つサイトではありますが、溢れ出る好奇心を満たすまでには至りません。
⇒ Scalemates URL:https://www.scalemates.com/
そんなこともあり「ひとつひとつのキットの姿を出来るだけ詳細にアーカイブしてみたい!」という思いに囚われました。自分が出来ることなどたかが知れていますが、せめて自分がこれから出会うキットたちくらいは、その存在をしっかりと記録しておきたいな、と。
美麗で精緻な作例や、圧倒的なカスタマイズに関しては、多くの先輩たちが披露してくれています。とてもわたくしごときが、今から追いつき追い越すことなど無理。けれど、そんな自分でもキットそのものを、きちんと記録してアーカイブすることなら出来ます。もちろん、手に入れたキットはちゃんと作ってあげたいと思いますが、基本的には、そのキットをインストのまま、素直に作ってみることにこだわりたいと思います。それが、彼らの素顔であり、メーカーや設計者が思い描いている完成形だと思うからです。なんだか製作技術を上達させられないヘタレモデラーの言い訳にも聞こえますが・・・、開き直って、そういう発想の人間がいても良いではありませんか(笑)
■展示内容のご案内
そんなこんなで、当館はゴールの見えないまま開館しました。繰り返しになりますが、この博物館は「世の中にはこんな飛行機のプラモがあるよ」ということを伝えるための場所です。よって、アップされる記事は、
①キット紹介(パッケージ、パーツ、インスト等の画像)
②キットヒストリー紹介(キットやメーカーにまつわるエピソード)
③キット&インストレビュー(実際の制作にあたってのTK的考察)
を中心としたものになります。
よくあるプラモブログのような、製作日誌的な記事や、塗装テクニック、改造テクニックなどを紹介する記事はほぼないでしょう(だってスキルがないもの)。また、モデルとなった実機について触れることも、必要最小限になると思います。この博物館の主役は、モデルとなった実機ではなく、無垢のキットそのものなのです。
と、思いつくままお話してきましたが、当館がどうなっていくのかは、TK自身もまだ曖昧模糊としています。続けていく過程で、また新たな思いに駆られ、脱線したり迷走したりするかもしれません。はたまた、どれくらい続けていけるのかも分かりません(笑) せめてキリのいい数字で100くらいまでは頑張ってみたいところですが・・・(月産2機のペースで5年か・・・)。
そんなわけで、長々とお時間をとってしまいました。まだまだ、これから充実させていかねばならない当館ではありますが、共感いただける方とは、末永くお付き合いをできればと願って止みません。また、何分にも飛行機モデラー歴1年にも満たない若輩者ゆえ、トンチンカンなことを綴ってみたり、無知を丸出しにしてしまうことも多々あるかと思います。むしろ、無いほうがおかしいです。目に余る時は、是非とも、コメント欄にて先輩諸氏の冷静で的確なアドバイスをいただけると幸いです。
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
平成29年2月18日
神名樋野航空博物館 館長